About MORIHICO. Vol.07
コーヒーとおしゃべり、コーヒーと甘いお菓子、コーヒーと音楽、コーヒーと家具、コーヒーとマルシェ。そこにコーヒーがあるだけで、なんて豊かな気持ちになるのだろう。
コーヒーの特別感は“豆”にあるのではないか、というのが市川の持論だ。「葉っぱと違って、豆は植えたら芽が出て木に育つ。つまり、生命を煎じて飲んでいるのと同じ。一粒たりともムダにできない」。
いうまでもなくコーヒーは、腹ではなく精神を満たすもの。がんばったとき、気を鎮めたいとき、泣きたいとき、分かり合いたいとき…。人間が人間らしくあるために、なくてはならない一杯なのだ。
だからこそ、MORIHICOは一杯のために真剣勝負をかける。生豆の選定からブレンド、水のこと、ネルドリップのこと、お湯の温度、ポットの形状、そして、ソーサーに添えるスプーンの温かさまで。カップの縁で香る漆黒の液体は、苦味よりもむしろ甘みが先立ち、心なしかまろやかな粘性を感じさせる。喉元を通過して心をじわじわ温めるコーヒーは、北国の気候風土に育まれたかのよう。濃厚な味噌ラーメンが北海道名物として君臨するように、北海道にはMORIHICOのコーヒーがしっくりとくるのだ。
あくまでもコーヒーの探求に軸足を置きながら、一杯を引き立てる「サムシング」にも手をぬかない。高じてMORIHICOは、将来、ハウスメーカーになっているかもしれないよ、と市川は笑う。たしかに、コーヒーをおいしく味わうための家づくりができたら、すてきだと思う。